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心を使って|保育の窓

 保育園では同じ年齢だけでなく、異年齢と関わることで多様な経験ができ、たくさんの気持ちのやりとりをする機会が増えます。

 先日も朝9時半頃、園庭でつき組〜やま組が同年齢や異年齢でそれぞれ遊びを楽しんでいました。すると砂場の近くでおもちゃを入れるカゴをつき組の男児Aくんとはな組の女児Bさんが引っぱり合いをしていました。つき組の子とはな組の子が取り合いするのはめずらしいのでそっと近くに寄り、様子を伺っていると、無言でカゴを自分の方に引っぱって、離さないAくんに対して「これはだめよー」と言い「みんな片付けできんのよー」と取り返そうとBさんも自分の方に引っぱっています。Aくんはそのカゴで遊びたいので手を話す気配もなく、Bさんは「どうしよう」と困っていました。

 ここでBさんが考えたのは、①Aくんはまだつき組だから、使い方は違うけど、こんなに欲しがっているので使っていいよと手を離す。②きまりはきまりだからと強引にカゴを取り戻す、のどちらかで私に「どうしようー」と相談してくれました。私は②でもいいのかな?と思いつつ「そうね、どうしようかねー」とあいまいに答え、Bさんはどうするかなと思って見ていると「まあ使ってもいいかー、しかたないかね」とBさんが手を離して下にカゴを置きました。カゴが自分のものになったAくんは喜んで遊ぶと思ったのですが、どういうわけかカゴをしばらく持った後、下に置いて砂場で遊び始めました。

 Bさんはこの10分程の時間にたくさんのことを考えました。どうすればいいか悩んでいました。それはもう大人と同じレベルのように思えました。Aくんも強引にカゴを取られたのではなく、自分の気持ちを認め、共感してもらい、たくさんのやりとりから、言葉で伝えるのは難しいですが色々な感情を経験し、自分なりに今の状況を理解したようです。

 そのように自分から心を使って人に関わり、遊びを通して多様な経験をすることが大切だと思います。

黒瀬能子